こんにちは!獣医師の山浦です!
ワンちゃんやネコちゃんと暮らす上で必ずと言っていいほど起こる困り事のうちの一つが、おしっこトラブルです。おしっこを漏らしてしまった時にどのような事が考えられるのでしょうか。
尿漏れを疑う症状
- トイレの場所がわかってるはずなのにトイレ以外でおしっこしている
- 寝床が濡れている
- 通った後の床が濡れている
- 陰部がいつも濡れてる、赤い
考えられること
- 排尿に関わる病気を抱えている
- 生活環境(トイレの環境)に問題がある
①排尿に関わる病気(代表的なもの)
膀胱炎
原因は膀胱の問題や、ホルモンの問題、腫瘍など様々です。ワンちゃんで代表的な原因としては細菌感染、尿石などで、ネコちゃんの場合は特発性(原因不明)が多く見られます。考えられる原因に応じて対応は変わります。ネコちゃんは特にストレスが膀胱炎の原因となる事が多いため、トイレの清潔さに気を配ることがストレス軽減に繋がります。
尿道結石
膀胱の環境の乱れにより、尿中のミネラルが固まることで結石ができます。代表的な結石には溶かす事のできる石(ストルバイト)とそうでない結石(シュウ酸カルシウム)があります。結石が尿の通り道で詰まると急性腎不全や尿毒症に繋がる可能性があるため、膀胱の環境を整えるための治療が必要になります。尿石ケアのフードや、サプリメント、状態によっては外科手術が必要になります。
前立腺の拡大
前立腺がホルモンや腫瘍によって大きくなると、おしっこを出しにくくなり、膀胱に負担がかかる事で尿漏れにつながります。男の子で、ホルモンによるものであれば精巣摘出術(去勢手術)を行います。
神経の問題(ケガ、腫瘍、ヘルニアなど)
交通事故などによるケガや、腫瘍、ヘルニアなどにより、膀胱や尿道の神経や筋肉に問題が起こると、尿漏れを起こす事があります。
おしっこの量、飲水量の問題
多飲多尿「大量に水を飲む、大量におしっこする」を引き起こす病気
糖尿病
腎臓病
甲状腺機能亢進症
副腎皮質機能亢進症(クッシング)
アジソン病
子宮蓄膿症
悪性腫瘍
などにより、おしっこを漏らすことがあります。
尿検査はもちろん、血液検査を含めた定期的な健康診断により、早期発見することが重要になってきます。多飲多尿の症状が見られた場合は早めに受診されることをお勧めします。
受診される時までに、最低5日間、1日あたりの飲水量を計測してみましょう。実際に飲水量が多いのかの判断基準にもなります。
ホルモンによるもの、発情
男の子は発情により、尿スプレー(壁などの垂直な方向におしっこ)をする事があります。マーキングする癖がついてしまうと、去勢手術を行った後もマーキングを続けてしまう子が一定数います。
また、ホルモンバランスの乱れにより、膀胱の機能が低下して、尿を漏らしてしまう病気もあります。老化だけでなく、去勢・避妊手術後数ヶ月〜数年で認められる事があり、治療としてホルモン剤を飲む事があります。
生まれつきの構造異常(異所性尿管など)
おしっこは腎臓で作られ、尿管という管を通って膀胱に溜まります。この管が生まれつき違う場所に繋がる子がいて、尿漏れを起こすことがあります。陰部が常に濡れている子が多く、寝ている時に尿漏れが顕著にみられます。
②生活環境
トイレの環境に問題がある
トイレの環境を整える事はストレスの軽減だけでなく、病気かどうかを確かめる意味でも重要になります。
ネコちゃんの場合、以下のことをまずチェックしてみましょう。
-
- 掃除の頻度
- トイレの個数(ネコちゃんの場合、人数+1個がお勧めです)
- 形状(カバーの有無や、適切な大きさ、トイレの入りやすさ)
- 敷材の種類
- 場所(食事場所から離れていて、静かな場所)
- 周辺の芳香剤の匂い
また、ストレス軽減のためにフェロモン製品等を取り入れてみるのもいいでしょう。
不安、恐怖、興奮
雷などの突然の大きな音や、地震などに驚いたり、興奮した時に尿漏れを起こす子がいます。一過性に漏らしただけであれば問題はないでしょう。
認知機能の低下や老化
認知機能の低下により、今までできていた事が出来なくなる事があります。また、関節の痛みや筋力の低下によりトイレにたどり着けなかったり、うまく跨げなかったりすることでお漏らしをしてしまう事もあります。トイレまで行く事が難しい、トイレを忘れてしまった子は、漏らすタイミングを把握してペットシーツを寝床の近くに敷いたり、オムツを履くことも一つの手段になるでしょう。
まとめ
単に尿漏れと言っても、原因は様々です。
トイレのトラブルは繰り返す事も多いため、原因を考える事だけでなく、再発の予防を心がける事も大切になってきます。例えば、粗相をしてしまった場所はしっかり掃除をして今後そこをトイレだと認識しないようにする、などです。
おしっこの匂いや回数、時間に限らず、うんちを観察したり、その子の「普通」の状態を把握しておくことで、体調の変化があったときに早く気づいてあげられます。
年齢を重ねるとトラブルも増えてくる為、「健康であることを確かめる」事も重要ですので、定期的な通院を心がけましょう!