お知らせ

当院でのFIP(猫伝染性腹膜炎)の治療例と治療費について

投稿日:

FIP(猫伝染性腹膜炎)の治療の流れや費用に関するお問い合わせを多く頂いております。

当院での治療例と治療費について示しますので、参考にして頂ければ幸いです。

当院での治療例

りらちゃん、ラガマフィン、女の子、4ヶ月、1.15kg

いつもより元気がなく、食欲が落ちてきた(50%くらいしか食べない)、飲水量が減り、おしっこの回数が減った(1日3〜4回→1日1回)との事で来院されました。

診察時に身体検査をすると、発熱していることがわかりました。

レントゲン、エコー検査により貯留液(腹水)が溜まっていることが判明しました。

症状から、FIPを疑い、血液検査、貯留液の検査(PCR検査等)を行いました。

 

検査結果〜診断まで

一般血液検査では貧血、白血球数の上昇、蛋白の上昇、アルブミンの低値が認められた。

炎症マーカー(SAA): 225以上(高値:激しい炎症)

蛋白分画: ポリクローナルガンモパシー(感染症や炎症の可能性)

貯留液(腹水)のPCR検査: 猫コロナウイルス陽性(+)

以上の検査結果と臨床症状から、FIPと考え、食欲も一定以上あり、自宅での投薬が可能な事から、GS-441524(錠剤)とステロイド(炎症を抑える)による治療を開始しました。

 

治療経過

治療開始1週間後には食欲や飲水量、おしっこの回数もいつも通りに戻り、先住犬の子と遊べるくらいの元気が出てきました。血液検査では貧血の改善(正常値)、炎症マーカー(SAA)が3.8未満(正常)となり、エコー検査で貯留液(腹水)が減少が認められました。

以下の写真は治療開始1週間後のお腹です。(エコー検査の際につけたゼリーのせいでみえにくいですが、)お腹のラインがスッキリしています。

費用について

一つの目安としてください。

FIPの診断(状況証拠の積み重ね)のためにかかるおおよその費用

血液検査 12,000円前後

血液の蛋白分画検査 3,000円

画像診断(レントゲン、エコー検査) 12,000円〜24,000円

 

ウェット型の場合は、

腹水(胸水)抜去+腹水(胸水)性状+コロナウィルスPCR検査 25,000円〜

 

ドライ型の場合は、

エコー検査で病変を確認し、患部に針が刺せる場合は細胞診検査  20,000円〜

 

FIPと診断後にかかる治療費について

GS-441524(錠剤)の場合

多くは子猫の発症が多く、成長(体重の増加)と共に費用が変わります。また、症状によって増量が必要になる場合があります。

 例えば、ドライ型で神経症状や眼に病変がある場合には投薬量を1.25倍となることがあり、その場合も費用が1.25倍となります。

海外からの輸入薬のため、円安、輸送コスト、仕入れ先の価格改定などにより変動します。

下の表が費用の目安です。

 

モルヌピラビル(粉薬)の場合

84日間続けます。薬が飲める状態であることや、上記に書いた問題点はありますが、費用面ではGS-441524の3分の1程度ですみます。

 

レムデシビル(注射薬)を使用する場合

多くは重症例です。

入院下での管理が基本となり、レムデシビルの静脈投与の費用以外に、入院費、重症患者管理費、静脈点滴、血液検査、画像診断、注射の費用などが別途かかります。

 

具体例として、

体重1.5kgの仔猫のレムデシビルの静脈投与の一回あたりの費用例です。

(※体重が3kgだと下記の2倍の費用がかかります。)

レムデシビルの推奨投与量は1日1回、10〜20mg/kgです。

当院では15mg/kgの量を静脈投与する事が多いです。症状によって判断しますが、15mg/kgの場合で24,000円前後です。

3日間の静脈投与で上記×3の費用となります。かつその後の体調次第ですが最低でも4日間のレムデシビルの皮下注射の投与をおこないます。

15mg/kgの量で治療すると3日間のレムデシビル静脈投与で72,000円、そこからの4日間のレムデシビルの皮下注射の費用が80,000円前後、その他に上記に記載した入院費や検査費用、静脈点滴費用、その他の必要な注射薬等の費用がかかります。

 

経過観察にかかる費用

原則、治療開始後4週間までは週に1回検査をします。治療開始5週目からは、2週間おきに検査を行います。

基本的には、血液検査(貧血や炎症マーカー等)やエコー検査等を行います。(1回8,000円〜)

※その子の状態やウェット型、ドライ型によって検査の頻度や、内容が変わります。

 

当院としての願い

FIPは治す事が、闘うことが出来る病気になっています。しかし、当院でもやはり命を落としてしまう子がいるのも事実です。その多くは治療を開始するのが遅れてしまい、急速な悪化に対応が出来なくなってしまった結果です。

飼い主様にお願いしたい事は、かかりつけの病院様などでFIPの疑いがあると言われた時に、1日でも早くFIPの治療を開始するという事が何よりも大切だという事を知っていただきたいのです。

FIPの診断の為に、早急に状況証拠を積み重ね、治療に入る事、かつ正しい治療法の選択肢を知っていただきたいのです。

治療費やどの様な経過を辿るのか、副作用は、など様々な不安があると思います。

1人でも多くの命を守るため、飼い主様の不安を減らすため、今回、具体的な内容を書かせていただきました。

当院ではFIP相談専用のLINEも設けています。勿論、お電話でのご相談も可能です。

当院がFIPという病気に対して少しでもお力になり、飼い主様の不安を減らせればと思っています。

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