こんにちは!獣医師の山浦です。
今日は、誤飲・誤食についてお話しします。
誤飲・誤食のリスク
若くて好奇心が旺盛な子や、遊び好きな子は誤食をしやすい傾向にあります。誤食をすると、窒息や、食道・胃・腸の閉塞や臓器の損傷だけでなく、誤食物の成分に対する中毒により、命を落とす危険性があります。
誤食をすると、食欲・元気がなくなったり、何度も嘔吐を繰り返したり、血便や、尿が少ない、よだれが出る、痙攣している、呼吸が荒いなどの症状が現れることがあります。
症状が現れるまでの時間は様々です。翌日以降に症状が現れる場合もあります。
誤食しやすいものの例
犬や子どものおもちゃ、小さなボール(スーパーボールなど)、トイレシート、ジョイントマット、ビニールやヘアゴム、ボタン(糸付きは特に注意)、ペットボトルのキャップ、骨や竹串(特に焼き鳥の串)、アイスの棒、爪楊枝、ヘアピン、ネジ、クギ、画鋲、マチ針、薬のアルミ包装シート、布、綿、ひも(特に長いものは危険)、人間の薬やたばこ、玉ねぎやチョコレート、ボタン電池、乾燥剤、洗剤、ゴキブリ駆除剤、観葉植物など
食べてはいけないもの(中毒)の代表例
食べてしまったら…
・「何を」「いつ」「どのくらい」食べたかを把握する
・今の症状「元気」「呼吸の荒さ」「下痢・嘔吐・よだれなどの症状の有無」を確認し、病院に連絡して、受診する
・病院に行く時は誤食してしまったものや、その成分表示が書かれた物を持っていくと診察に役に立ちます。
注意:誤飲・誤食をしても無症状の場合もあります。翌日に症状が出る場合もあります。
どのような処置、治療が必要になる?
・催吐処置できる場合
催吐処置とは、薬剤の副作用を用いて誤食した物を吐き出させる処置です。中毒物質を誤食してから時間があまり経ってない場合に行います。
場合によっては催吐処置を行えない時もあります。
・尖った物・ボタン電池などを飲み込んだ場合
・洗剤(強酸性・アルカリ性)や、灯油・ガソリンなどを食べた場合
・吐かせられない程状態が悪い場合
・既往歴(持病)により、催吐処置ができない場合
催吐処置はただ「吐いたらOK」ではありません。催吐剤の副作用によってフラついたり、誤嚥により肺炎を起こしてしまったり、急性膵炎(命に関わります)を引き起こす可能性もあり、数日間は体調の変化がないか、状態を確認する必要があります。
・催吐処置できない場合
催吐処置ができない場合、内視鏡手術によって誤食物を取り出すことも検討します。内視鏡手術は麻酔の上で行います。麻酔のリスクだけでなく、誤嚥してしまった場合、肺炎につながる可能性もあります。
尖った物でなくても、胃を通り越してしまうと、催吐処置や、内視鏡手術を行う事ができません。誤食した物による中毒の恐れがあるが、解毒する方法がない場合は、中毒物質の吸収を妨げる薬を飲んでもらったり、点滴を行ったりします。中毒症状は時間差で現れることもあるため、数日間の経過観察が重要です。
胃や腸などを傷つけたり、詰まって閉塞を起こしかねない物を飲み込んでしまった場合は、開腹手術で誤食物を取り出す必要があります。開腹手術の場合、麻酔のリスクは勿論のこと、誤食物を取り出せたとしても、腹膜炎や敗血症などの合併症を起こしている場合は命に関わる事があります。
誤食しないためには
室内編
・飲み込めるサイズのものを届く場所に置かない
・薬は蓋をしめて棚にしまう
・おもちゃは遊ばない時は片付ける(特に留守中)
・お留守番の時はケージで過ごしてもらう
・ペットシーツを破くならメッシュ付きのトイレトレーを使う
・咥えたおもちゃを指示通りに離すようにしつけをしておく
ストレスによって誤食をしてしまう子もいます
・お留守番の時間が多くなりすぎないようにする
・適切な量のご飯をあげる
・遊ぶ時間を確保する
等といった工夫が必要になるかもしれません。
屋外編
・散歩中、ごみが落ちている場所ではリードを短く持ち、足早に通り過ぎる
・散歩中にフードやおやつを与え、飼い主に注目させる
・運動量が少なくなりすぎないようにする
誤食しようとした時の注意点
慌てて無理に取り出そうとすると、本気でかみついてくることがあり危険です。
また、「取られる前に早く飲み込まなきゃ」という気持ちにさせ、むしろ、飲み込ませてしまうことがあります。
まず、大好きなおやつや、おもちゃで「交換」を試してみましょう。
離してくれないなら無理やり口を開けることも考えましょう。
まとめ
ワンちゃん・ネコちゃんは食べてはいけない物かどうか、わかりません。食べてはいけない物を把握することも必要ですが、最も大切なのは「食べさせない」事です。誤食をしてしまいそうな物がないか、家の中を見渡して、確認をしてみましょう。